現在の日本では人間の居住区に生えている樹木は多かれ少なかれ人間に運命を左右される定めにある。
特に、街並みに配置された街路樹は、その生命の始めから終わりまで人間に管理されている。
街並みを飾るため、人間の勝手な事情で道路脇に並ばせられた樹木たちは、また人間の勝手な理由で処分されてゆく。
第六小学校近辺
鉄砲町の商店街には、街路樹として多くの柳の木が植えられていた。
たおやかに、しなやかに葉を揺らし、行き過ぎる人々を見送る柳たちは
さながらこの商店街のチアガールのようであった。
足元を踏みつける車を優しく見守る
歩道橋上より 北側を望む
三日町との境まで植えられていた
街路樹の上に更に電線がある
2002年(平成14年)、三日町方面から延びてきた電線地中化工事が鉄砲町に及ぶことになった。
電線地中化工事は、七日町、本町の商店街がアーケードを撤去したあと、電線が街の美観を損ねるとされ
たために始まった。工事開始当時は世の景気も旺盛で予算も豊富であったのだが、その後は景気後退と
共にだいぶペースダウンをし、十余年を経てここに及んだのである。この通りについては良く育った街路樹が
あるために、別段電線が邪魔だなどと感じることもなかったが、ここだけ飛ばして先に進むということもできない
ためか、今まで街の風景造りに役立ってきた柳たちを全て切り倒しての工事が断行されることになった。
柳たちは街によく馴染んでいた
伐採目印のリボン
よく見ると柳の1本1本にピンクのリボンが巻かれている。これは商店街のイベントの飾りなどではない。
柳たちにとっては、このピンクのリボンは死刑判決の印。伐採業者に「この木を切れ」と下された指示なのである。
それ程景観は損なわれていただろうか
電線のないスカッとした景観のために柳たちは伐られ、姿を消した。
以前より景色は良くなっただろうか?街の中で変えるべきもの、守るべきものを
間違えてはいなかっただろうか。後釜に、また幼木が植えられた。しかし、これさえ
またいつか工事のついでに伐られてしまう運命にあることに変わりはない。
鉄砲町街路樹 2002年伐採