ハッピーミシン
ヤマザワ北駅前店の閉鎖に伴い、地元から要請の強かったヤマザワ宮町店が建っている敷地は
以前はハッピー工業の工場であった。戦後まもない頃のものと思われる建造物は風格さえ感じさせるもので
あったが、工場の立谷川工業団地移転に伴い撤去された。
木造の事務所は戦前戦後の学校建築にも似て、古いながらも凛々しく存在感を示していた。
窓のしつらえ方にも変化があり、採光の工夫が感じられる。
内部は落ち着いた明るさの成熟した空間であっただろう。
工場部分は目的別にそれぞれの建物に分散していたと思われ、何棟もの平屋、
二階建ての建造物が群をなしていた。
会社周辺は塀で囲われていた。塀の上には建物だけでなく、電源関連の構築物が覗く。
工場の機器に配電するためか、多くの電線と碍子が張り巡らされている。
ハッピー工業はミシンの生産で有名だった。衣料品が家庭内で作成されていた時代、
ミシンは重宝され、多くの台数が国内生産されていた。ミシンメーカーもハッピーに加え、ジャノメ、シンガー、ジューキ
ブラザーなどがしのぎを削って競争を繰り広げていたが、既製衣料が普及する時代になってミシン市場が縮小すると
廃業、統合に追い込まれ以前の勢いは全くなくなってしまった。
ハッピーミシンも現在はシンガーハッピーブランド扱いとなっている。
南側には山形三小があり、この道も通学路である。
この頃には既に使われていないと思われる建物もあった。
古い工場には工員の寮が併設されている場合もかつてはよくあり、
通勤時間の短縮と生活費の軽減に有効であったが、個人の時間を重んじる時代になって
現在では社宅や寮を備えた会社はほとんど見られなくなっている。
ハッピー工業株式会社 旧本社 ~2011