丸久 空中電車
山形市七日町に昭和31年、大沼デパートと相前後して開業した丸久デパートは当時の山形の人々を
驚かせるものを満載していた。当時はエスカレーターさえ目にしたことがなかった人たちが大勢いたわけだから
何を見ても物珍しい状態だったわけであるが、その中でも地上6階建てのビル屋上に追加設置された
「空中電車」は大沼にはない独特な設備として子供たちの注目を浴びることとなった。
高いビルの上のモノレールであるから、地上からの距離は今でいう富士急ハイランドのコースター並みの
ものであっただろう。安全とはわかっていても、その高さに二の足を踏む子供も多くあり、乗っている子供を
うらやましいような、けれど乗りたくはない複雑な気持ちで眺めていた。
遥か眼下に山形の街並みが広がる特等席に誇らしげに乗っている子供たちも、今は60歳以上。
この電車が記憶に残っている人もだんだん少なくなってゆく。
今は閑散としたマンション街に姿を変えつつある七日町。少子化とはいえ、子供に何の楽しみも
与えることができなくなってしまった街が、50年前は驚きと活気のあふれる夢のフィールドであった。
山形は50年かけて何をやってきたのか、山形に限らず世の中は進んでいるのか退化しているのか、
過去の街の姿を知るにつれ、疑問と虚しさが湧いてくる。
子供も大人も七日町に来ることは晴れやかなイベントであった。
山形丸久 (1956−1973)以後はセブンプラザとなる