大沼デパート 閉店セール
2020年1月26日に突然の閉店となった大沼は、大手なら大抵どこの店舗でも
行なうはずの閉店セールさえ行なえなかった。当日まで従業員にさえ倒産が
知らされなかったわけであるからそうなったのであろうが、売りさばいた商品券
の使用まで不可能とする踏み倒しには疑問と非難の声が巻き起こることとなった。
山形県を代表する百貨店が怪しげなファンドにコントロールされ、長年の顧客を
このような形で裏切ることになったという悲惨な状況は多くの県民の心に深い傷を
残すこととなった。騒動の一因をなした山形銀行の動きにも不信の目が注がれた。
山形市民、県民のそうした思いには大沼本体は応える余力は当然なかった。
その状況に、ある商業コンサル会社が代理閉店セールの企画を立ち上げ、
形としては顧客への感謝を表現する機会を半年ぶりに得ることになった。
建物を所有者から借り受け、かつての従業員から参加可能な人たちを集めて
この時だけ期間限定で開店するという変則的な形ではあったが、市民・県民の
関心は高く、債権者の手に渡らなかった在庫と、コンサル会社の持ち込み商品が
7月中旬から9月末まで大沼の建物の中で販売された。ただし、全館使用は叶わず
1~3と5階の階限定での催しとなった。エスカレーターやエレベーターは稼働した。
変則的であっても、主体が大沼でなくても顧客の気持ちを収めるにはこれは
必要な催しだったようだ。日によっては6000人ほどの集客があったともいわれ、
昔日の大沼の賑わいが一時的にせよ再現されることとなった。
最終日の閉店時には、実際の倒産閉店時にはかなわなかった閉店セレモニーが
行なわれ、顧客からの感謝の拍手と従業員から顧客への記念品の配布、そして
シャッターおろしの儀式が実現することとなり、ようやく人々の心に区切りがついた。
大沼デパート 2020年 9月30日 完全閉店